【補稿】第9夜 シャンパーニュ、どんなグラスで飲む?


 出版社で編集者をしていた頃、著名人にお守りを見せてもらう企画を担当したことがありました。10年ほど前です。

 思い返せば、有名企業の経営者が子供時代から大切にしている手品の道具から、亡くなったお父様の形見のポロシャツといったものまで、物を通していろんなお話を聞くことができ、面白い経験だったなと思います。


 その中で、ある方が、シャンパーニュのコルクに硬貨を差し込んだ物を見せてくださいました。

 聞けば、初めて自分がディレクターとしてヨーロッパで手がけた、大きな仕事の打ち上げで、乾杯に飲んだシャンパーニュとのこと。

「こうして硬貨を差し込んで、お守りにするんだよ」

 現地のスタッフが教えてくれて、その場でさっと作ってプレゼントしてくれたそうです。

 素敵な話だなと思って、よく覚えています。


 新刊の中で、シャンパーニュを深い盃で飲むという私の普段の飲み方が登場するのですが、そのアイディアのもとになったのは、実はこのコルクお守りの方なのでした。

 その方の自宅に遊びに行った時に、オールド・バカラの素敵なクープグラスでシャンパーニュを飲みました。これってつまりは日本の深盃だなと思って、自宅で取り入れることにしました。これが、すごくいい。

 レストランなどでは細長いフルートグラスが定番のように思いますが、私は顎を突き出して飲む感じが、あんまり楽な飲み方ではないなあと思っていました。それに、なんか構えてしまうんですよね。もちろん、たまに高級な店で気張って飲む楽しさも認めます。

 盃のように直径が大きなものでシャンパーニュを飲むと、舌全体に泡がふわっと広がって、良いものです。空気に触れる面積が大きいせいか、顔に近づけた瞬間からもう、香りがふわ〜んと立ち上って、丸い味わいというか、尖っていないというか、リラックスして飲める点も好きです。家で飲むにはぴったり。

 なにより、酔っ払って倒す心配がありません。


 新刊には、いろんな酒器と飲み方が登場します。楽天で数百円で買っているものから、骨董市での一点ものまで、それはもういい加減に良い加減に、私の好きな飲み方を紹介しています。スタイリストなし、全品私物ですから、リアリティもあると思います。天ぷら鍋でビールを冷やすのは私だけかも? でも、おすすめです。ぜひ見てみてください。



*新刊『愛しい小酌』が2022年10月21日(金)に大和書房から発売になります(詳しくはこちら)。本には書けなかった裏話やエッセイなどを、【補稿】とし、発売日まで毎夜更新しています。



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