新刊『愛しい小酌』の入稿中に、雑誌Hanakoで茶人・富士華名さんとの対談の仕事がありました。東京の華名さんのアトリエへ行き、おいしいお茶をたくさんいただいて、すごく良いリフレッシュになりました。入稿だからと家でじっとしているより、適度に負荷をかけて(気の張る予定をいくつか入れて)外へ出ていったほうが、結果、メリハリがついてインプットも増えるように思います。
私が華名さんを知ったのは約3年前、Instagramを通じてでした。場作りのセンス、茶器の選び方、写真から伝わってくる雰囲気の美しさなど、ひと目でファンになりました。アトリエでレッスンが受けられると知り、申し込んだものの、コロナが本格的に流行してレッスンは延期に。
コロナ禍で生活が大変だった時期に、彼女がアップする写真や動画を見る間だけは、深呼吸して、一緒にお茶を飲んでいるような気分になれました。お酒もいいけど、お茶もいい。喫するって大事です。
実際の華名さんは、なにかひとつ聞けば、こちらの予想を軽々と超える答えが返ってくる。感性、知識、努力。すべてが斜め上をびゅーんと飛行していくような人だと感じます。
対談のなかで、なんの流れだったか話が脱線して、華名さんが東京のとある駅で幽霊を見たというエピソードを教えてくれました。他の人はどう感じるかわからないけれど、私は「来た!」とうれしくなりました。
じつは、移動にこそ本質があるのではないかと、その数日前に電車に乗っているときにふと考えていたんです。駅は移動する群衆のための場所だから、時空を超えた「なにか」が存在していても不思議ではない。他の人に言っても理解されないようなことも、華名さんとだったらもっと話してみたいなと思いました。
筆名ではない本名のほうの仕事でも、クリエイティブな人たちにインタビューをする機会が立て続けにありました。短時間で進行通りにぎゅっと何本もインタビューを詰めなくてはならないので、たのしいけれども相当疲れもするだろうと思って、ユンケルを飲んで挑みました。
スタッフの協力もあって、万事順調に進み、仕事は無事終了。どの方もとても素敵で、自分の言葉を持っていて。その夜は興奮してなかなか寝付けませんでした。
クリエイティブな人と話すことの、なんと楽しいことか。
対面していると、虹色のシャワーを浴びているような感覚になって、私の中にある「これをやってみよう」「こんなことをしてみたい」という気持ちが共振してジャンジャカ鳴らされるような気がします。
クリエイティブな人たちに会いたくて、私はこの仕事をしているのかもしれません。どんな形であっても、人に会う仕事を続けられたらいいなと思ったのでした。
*新刊『愛しい小酌』が2022年10月21日(金)に大和書房から発売になります(詳しくはこちら)。本には書けなかった裏話やエッセイなどを、【補稿】とし、発売日まで毎夜更新しています。
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