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リノベの話。2階建てから平屋へ。

 7月の着工に向けて、家の図面を2階建てから平屋へ大幅に変更しました。  工務店さんとの打ち合わせを重ねるなかで、基礎工事の予算が想定以上に膨らんでしまったことや、構造上どうしても動かせない柱があることなど、色々な制限があることが分かってきました。こういうとき、細々と金額を削っていくよりは、発想をがらりと変えたほうがいいと判断したのでした。  不思議なもので、昨年からかなりの時間をかけ、様々な角度から検討して「これ以上はない」と納得できた図面だったにも関わらず、いざ平屋という選択肢を思いつくと、「むしろ、こっちに変更して良かった」と思えるんですね。ヒトの脳の柔軟性って、本当に不思議だと思います。何かを諦めて平屋にしたというより、自ら平屋を選んだのだと、後付けでもいいから調整していく伸びしろのようなものが、備わっている。


 平屋にしたことで、ゲストルームから富士山は見えなくなりました。でも、そのへんを散歩したりドライブすれば、富士山はいつでも目にすることができます。

 ゲストルームを一階の南側に配置することによって、プライベートな縁側ができ、すぐ外に出られるようにもなりました。焚き火にあたりながらワインを飲んだりもできますし、春は梅や桃を見ながらピクニックもできます。すぐ目の前には夫婦松。自然とつながっている感覚は、平屋のほうがむしろ濃くなったと思います。


 もうひとつ。私の書斎をなくすことにしました。  当初、2階の富士山が見える場所に書斎を設定していたのですが、閉じこもって仕事をするより、キッチンやダイニングや和室など、好きな場所で家庭内フリーアドレスができたほうが楽しいんじゃないかと考えたのです。それに、この狭い仮住まいで3か月暮らしてみて、生活にまつわる機能がぎゅっと集まっているのって、案外いいなあと思ったのでした。  いつかまた家を建てることがあったら、憧れのアーネスト・スタディのようにしたいと思います。


 じゃあ、大量の本をどこに収納するか。これは最後まで課題でしたが、建築家のYさんが、収納階段にしてはとアドバイスしてくれました。昔の家にあったような、小さな箱(函と書きたくなります)を積み上げた、あれです。あれの現代版を作ることになると思います。

 東京で暮らしていたとき、「どこにいても本が感じられる家」というのが私の理想でした。それ叶えるために、階段の壁面一面を書棚にDIYリノべしたりもしていましたから、あらためて、自分が本当に好きなものに立ち返った気がします。(Yさんが担当されたこの家もヒントになりました)


 ところで、平屋なのになぜ階段があるの? と思いますよね。

 じつは、建物自体はそもそも3〜4階建ての高さがあります。2階より上は昔、養蚕仕事のかたの職場兼住居だったそうです。

 居住スペースとしては1階のみの「平屋」なのですが、2階から上は吹抜の天井をきれいにして、床をととのえて、ゆくゆくはギャラリーにしたいと思っています。だから、階段を作っておくことが必要なのです。  仰ぎ見たときの梁や天井の美しさ、それから、富士山の眺望を生かした、ダイナミックな空間ができます。居住部分と商いの部分の区別が明確について、むしろ、よかった。


 むしろ、◯◯。こればかり言っています。思い通りにならない事態が起きてからが本番。家作りもおもしろく進めていきたいと思います。


 柱の位置の関係で、キッチンも大幅な変更が必要になり、既製品だとちょっと難しそうです。ほぼ意を決めていた某メーカーから、フルオーダーに変更するのですが、その話はまた。






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