月に1,2回行く喫茶店のトイレに、気になる貼り紙があります。
「オムツを捨てないでください。大変匂うので、各自お持ち帰りください」
ということが、実際は、もっと長い文章で書かれています。
オムツっていうのは、古今東西、くさいに決まってます。それに、おいしいものやお茶を出す店で、こんなお説教を貼り出さなくても......いつも風通しの悪いような気持ちで見ています。
「オムツはこちらに捨ててください」
ゴミ箱をひとつ置いたら済む話なのではないでしょうか。
私だって将来オムツが必要になるかもしれない。トイレに入って、オムツを袋に入れて席に持ち帰り、それをバッグにしまうのは、嫌ですね。
赤ちゃんのトイレにはたいてい専用のゴミ箱が設置されているのだから、大人(その店は高齢の方が多い)用のものだって設置したらいいのに。そう思います。
先日訪れた京都では、こんな光景を見ました。
旅館AとBが並んでいます。川沿いの美しい街です。Aはピカピカで新しい。Bはちょっと古め。Bの外壁には垂れ幕が掲げられています。それも、全ての壁を覆い尽くすくらい、大量に。
「旅館Aを運営する株式会社ナントカは、決められたルールを守らず、勝手に宿を建設した。断固としてこれを許してはならない」
というようなことが、これもまた、言葉を尽くした長い文章で表現してあります。
この宿の前では、旅の記念撮影をしたくないなあと思ったのでした。
AとBは、当然、スタッフ同士が顔を合わせることもあるでしょう。
B:「いやね、なにも、あなたたちを責めたいわけじゃないんですよ」
A:「こっちも困ってるんです。本社が強引にやるもんですから」
こんな風に、親玉を責め合って過ごしたりするんでしょうか。
それとも、プイっと顔を背けて、お互い知らんぷりなのでしょうか。
自分が吐く言葉というのは、結局、自分に還ってくるものだと思います。トイレの貼り紙や垂れ幕が、経営者や従業員の視界に必ず入って、その言葉を毎日認識して、怒りはしつこく持続されていく。むしろ、怒りを手放したくないのかもしれません。
Bのほうは、お客さんから当然「あの垂れ幕のことなんだけど──」と話題を振られるでしょう。
それきた!彼らの非道について聞いてくださいよ!
切々と訴えるでしょう。
私なら、Aにも、Bにも泊まりません。
Aのお客さんを減らすことは、Bの目的のひとつでしょう。目的は達せられるでしょう。しかし、Bにもお客さんはこないと思います。共倒れというものでしょうか。いずれにしても、生きづらそうな環境です。
・14歳に向けた料理本のために、エッセイを納品する。発売は2月。
・長年の友人たちと久々に集う。新潟、千葉、神奈川、そして私が移住する山梨。それぞれの多拠点生活の構想をおもしろく聞く。
・矢野顕子さんのアルバム『音楽はおくりもの』がよくて、毎日聴いている。とくに素晴らしいのは、津軽海峡冬景色のカヴァー。小さな音の粒の、ひとつひとつ、聴き逃したくない。
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