- KEI SUZUKI
返事のいらないラブレター
春の自粛期間中に、ひとつ、初めてのことに挑戦してみた。
多くの人が毎日していること。でも、その対象(相手)がすごく特別。さて、なんでしょう。
クイズのようになってしまったけれど、答えは「メール」。面白かった本の著者にメールをしたのだ。著者のSNSのプロフィール欄にメールアドレスが書かれていたので、誰にでも窓口が開かれていると解釈して、感想を送った。
私は定期的にエゴサして自分の本の感想を調べる。悪口を書く人はあまりいない。たいていは好意的なコメントだから、うれしい。まれにメールをくれる人がいて、これはもっとうれしい。そのひとがメールを立ちあげて指を動かす様子を想像する。会ったこともない私にメールするのに、どれほど勇気が要っただろう。だから、自分も同じことを著者にしてみることにしたのだ。
これはいつも思っていることなんだけど、自著への賞賛を宣伝のために利用するばかりで、自分が素晴らしいと思った本のエントリーを書かない在り方はとてもダサい。時間が取れないことを言い訳にしたり、「もっとちゃんと読み込んでから」と温めたままで、結局書けないできた本がたくさんある。書かなければ、伝わらない。
SNS上やブログで賞賛するのは難しい。まず、誰に対して書くのか。もちろん第一は著者だ。でも、私はこんな本を読んでいるんですよということを他のフォロワーや読者に見せるという時点で、それは純度の高い意思表示とは少し違った、どこか料理されたものになってしまう。「すっっごい良かった!」とだけ書くわけにもいかないから、かっこつけたくて、起承転結や言い回しなどを考えはじめたりもする。で、機会を逸してしまう。
著者へのメールなら、上記のことは考えなくて良い。ただ、正直に書けばいい。返事を求めないラブレター。返事を求めないということは、見返りを求めないということかもしれない。みかえり。相手がしてくれたことにこたえて、相手に何かをしてあげること。
ただ読みたい。読めることがうれしい。
もし私も誰かにそのような気持ちをあげられているとしたら、それだけで、私には書く理由になる。
(私がメールした著者からはお返事がありました)